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今回はO-1Aビザの申請プロセスと必要な書類についてまとめておく。今後変更の可能性もあるので、申請の際は米国移民局のホームページで最新の情報を確認し、移民弁護士と相談すること。

O-1Aビザ(通称Oビザ、O1ビザ)は選考基準が不明確で、移民局の審査官のさじ加減次第のところも多い。筆者はO-1Aのビザ申請にあたっては、過去担当したケースでは一度もO-1Aのビザ申請に落ちたことのない腕利きの弁護士と、過去米国移民局でO-1Aビザの審査官を務めていた弁護士にお願いしたが、彼らもいくら良いエビデンスがあったとしても最後まで結果は予想できないという意見だった。なお、日本人の弁護士にも相談したが、彼らはO-1Aビザ申請の経験が少なかったこと、また、通らない可能性が高いということでO-1Aビザの申請は反対された。

申請のプロセス

J-1ビザの場合と異なり、勤務先の企業がそのままスポンサーになるため、プロセス自体はシンプルだ。代わりに書類は様々なエビデンスや推薦書が必要で膨大な量になるため、その準備には時間がかかる。エビデンスが全て揃った段階から承認の連絡を受け取るまで、有料のPremium Processing(移民局が書類を受け取ってから15営業日以内に結果が出る)を使っても3ヶ月ほどはかかるイメージだ。特に、複数名にお願いする必要のある推薦書の依頼・雛形作成・回収がボトルネックになる。

  1. スポンサー企業の決定(=ジョブオファーの獲得)
  2. 弁護士の選定
  3. 書類の準備(次章詳細)
  4. 書類の提出

申請に必要な書類

Understanding O-1A Requirementsに詳しく書かれているが、以下の書類を準備する必要がある。O-1Aビザは1.科学者、教育者、ビジネスパーソン、およびスポーツ選手、2.芸術家、および、芸能人、3.映画、テレビ関係のタレント、および制作関係者の3つのカテゴリーがあるが、エンジニアの場合は1.のカテゴリーにあたる。

  • 8条件のうち最低3つを満たしていることのエビデンス(次章詳細)
  • 推薦状(次々章詳細)
  • スポンサー企業からのオファーレター
  • その他のサポートドキュメント(8条件に該当しないが補助になりうる書類、履歴書など)
  • 申請書(G-28, I-129I-94):基本的には弁護士の指示に従って埋めていくだけの書類

ポイントは、上記全ての書類において一貫性をもたせることだ。筆者の場合は「Human-Robot Interaction」という領域のエキスパートとして申請したため、あらゆるエビデンスや推薦書、オファーレターにおいて、自分がこの領域で実績を残していることを強調するようにした。少しでもエビデンスの量を増やしたいという心理は働くが、グッとこらえて、関連しないものについては思い切って切り捨ててしまうか、その他のサポートドキュメントに纏めてしまうのが有効らしい。

8条件のエビデンスと筆者の対策

O-1Aビザは、以下8条件のうち、最低3つを満たしていなければ申請できない。弁護士に話を聞く限り、審査に通る人は4つ以上条件を満たしている場合がほとんどとのことなので、可能な限りエビデンスを多く集めるよう努めること。

  1. Awards (Have you received a lesser nationally or internationally recognized prize or award for excellence in the field of endeavor?)
  2. Membership (Are you a member of any associations which require outstanding achievements of their members as judged by recognized national or international experts?)
  3. Press (Is there published material in professional or major trade publications or major media about you which relates to your work in the field?)
  4. Judging (Have you participated on a panel or individually as a judge of the work of others in the same or in an allied field of specialization?)
  5. Original contributions (Have you made original scientific, scholarly or business-related contributions of major significance?)
  6. Authorship (Have you authored scholarly articles in professional journals or other major media?)
  7. Critical employment (Have you been employed in a critical or essential capacity for organizations and establishments that have a distinguished reputation?)
  8. Higher sarary/remuneration (Have you or will you command a high salary or other remuneration for your services?)

以降、それぞれの詳細と筆者の場合の対策について説明する。なお、下記で「エビデンス」とあるが、基本的にそれぞれワードで2〜3ページの説明(例えばAwardsの場合、その賞がいかに国際的に価値があるかや運営機関の歴史、受賞者=自分自身がどのような功績を残し、なぜそれが賞に相応しいか、といった内容)と主催者のサインを用意する必要がある。

1. Awards

国内外において認められる賞を複数受賞したことがあるかどうか。信頼できる機関から成果を認められ、表彰されたことがあるかということなので、国内外の論文賞などが該当する。

筆者の場合は目立った研究実績は無かったため、大学時代のビジネスコンテストの受賞経験、渡米前にとある市が主催したハッカソンでの受賞経験や、渡米後にAT&Tが主催したSmart Cityに関するハッカソンでの受賞経験をエビデンスとした(弁護士曰く、かなり弱いエビデンスとのことだった)。

2. Membership

入会するのに厳しい条件が課されている会の会員であるかどうか。移民弁護士に聞くところでは、エンジニアや起業家の場合、Y Combinatorや500 Startupsのような選考の厳しい(=通過率数%未満)アクセラレータプログラムに参加している場合、この条件に当てはまるということだった。また、該当する団体がない場合に、筆者の知人のエンジニアは自ら自分の興味のある技術分野についてのカンファレンスを作っていた。

筆者の場合はMake SchoolのFounding Classの選考がギリギリその基準にあたったためエビデンスとした。エビデンスは基本的に複数無ければいけないため、幾つか若手の起業家やエンジニアのネットワーキングを目的とした海外のNPO団体にコンタクトしてみたが、エビデンスとなる書類のサポートはしてもらうことができず、結局このMembershipの条件についてはエビデンス1つで提出した。

3. Press

知名度のある出版物、あるいはメディアにおいて、取り上げられたことがあるかどうか。アメリカではWall Street JournalやForbsなどの大手メディアやテレビ、専門雑誌やウェブ媒体(TechCrundhなどでも良い)におけるインタビュー記事などがこれにあたる。

この「知名度」というのは「発行部数」「読者数」と言い換えることができるため、実は日本の新聞社が世界新聞発行部数ランキングの上位を独占する日本人としてはとても有利な条件だ。筆者の場合は、日経産業新聞やThe Bridgeのインタビュー記事をエビデンスとして使うことができた。

4. Judging

当該分野において、競技や論文などの審査を担当したことがあるかどうか。著名なイベントのジャッジとして招待されたり、論文賞の審査員をしたりしたことがあれば良い。

筆者の場合はアカデミアとしての実績がないため、渡米後に複数のプログラミングコンテストやハッカソンで審査員をさせてもらい、それをエビデンスとした。

5. Original contributions

当該分野において重要な、大きな功績を残したことがあるかどうか。研究者であれば論文の引用回数など研究のインパクトになるだろうし、エンジニアの場合は自分のプロダクトのダウンロード数やサービスから上がった収益、オープンソースプロジェクトへの貢献などになるだろう。

筆者の場合、大きな功績と呼べるものはなかったが、過去にロボット関連で取り組んだオープンソースソフトウェアの話や、大学時代の学会論文(×2)などをエビデンスとした。

6. Authorship

専門雑誌、あるいは知名度のあるメディアにおいて、記事を出したことがあるかどうか。研究者であればNature掲載などが分かりやすい。アプリ開発者であれば、本の執筆をしておくと分かりやすいエビデンスになる。

筆者の場合、その他の条件でのエビデンスが強くなかったため、短期的にエビデンスを強化できるこの条件について集中的に時間を使った。ロボットに関する記事の寄稿をITMediaやCNET、ReadWriteなどに行い、それぞれのメディアの重要性についても丁寧に説明した。移民弁護士もここを強化できたのが成功の要因だったと言っていた。

7. Critical employment

知名度の極めて高い機関で重要な仕事を行っている/いた経験があるかどうか。公職などもこれにあたるとのことだ。筆者の場合、当てはまるエビデンスは無かった。

8. Higher sarary/remuneration

収入が著しく高いかどうか。移民弁護士の一人いわく、年収130,000ドル以上、又は、40,000ドル/4年のべスティング(=年間10,000ドル)相当以上のストックオプションが目安とのこと。もう一方の弁護士曰く、同じ地域の同じ職業の人と比べて相対的に年収が高いと言えるかどうかとのこと。

筆者の場合は、年収・ストックオプションの条件には当てはまらなかったが、ベイエリアでのエンジニアの給与水準とオファーレターで示された給与の比較や、日本の平均的なエンジニアの給与との比較を補足的にエビデンスとした。

推薦状

推薦者

O-1Aビザの申請において誰から推薦してもらうかは極めて重要だ。

  • 自分の申請しようとしている(自分がExtraordinaryであると証明しようとしている)領域において
  • Nationally 又はInternationally実績を残しており
  • 自分と過去にプロジェクト経験がある、又は、親しい関係にある

人からもらう。大物であるほど良いのは正しいが、一度会っただけというような関係性の弱さでは全く補強材料にならない。推薦状は最低3通必要で、多ければ良いというわけではなく、ここでも自身の卓越性を示す領域が一貫していることが重要。なので、推薦状を依頼する際も、その点に気をつけてドラフトを作成しよう。上記の8条件で用意したエビデンスの強さに自信がない場合は、エビデンスのところで書いた内容のそれぞれを、推薦者からのコメントで多面的に補強していくのが良いので、結果的には数が多くなるかもしれない。筆者の場合は7通の推薦状を用意した。

筆者の推薦者になってくれた方たちには頭が上がらない。この場を借りて改めて御礼申し上げたい。ご参考まで、7名のプロフィールは以下の通り。

  • 日本での大学時代の研究室の担当教授(ヒューマン・マシン・インターフェースの研究者)
  • 同じく大学時代に課外活動で一緒にプロジェクトをさせてもらった教授(メディア・アートの研究者)
  • 上記プロジェクトで同様にお世話になった海外の大学の教授に紹介してもらい、研究室訪問やディスカッションをさせてもらった海外の大学の教授(自動運転、ロボットの分野で著名な方)
  • シリコンバレーのロボット業界で30年以上のキャリアを持つエンジニア・事業家
  • ロボットのオープンソースコミュニティで活躍されているエンジニア
  • 前職の先輩で現在は国際的に知名度の高いロボットの事業開発マネージャーを務める方
  • ベイエリアに来てから一緒に会社をやっていたロボットデザイナー・起業家

構成

推薦状の構成については

  • どんな点で候補者は優れているのか、どの領域においてExtraordinaryと言えるのか
  • 推薦者の所属先、ポジション、権限や過去の成果
  • 推薦者の所属先の紹介
  • 推薦者の過去の成果についての紹介(プロジェクト事例など)
  • 候補者と推薦者の関係性、出会ったきっかけなど
  • 候補者がとても才能にあふれており、推薦者のプロジェクトで貢献し、実績を残した話
  • より具体的にどんなプロジェクトで、どのおうに、どのようなチームで働き、どのような技術・製品を生み出したか
  • その結果として、どのような成果を得ることになったか(受賞など含む)
  • 結論として、候補者はアメリカの技術革新に貢献できる

という順に書くと分かりやすいだろう。

申請にかかる費用

O-1Aビザのプロセスにかかった費用の総額は5,050ドルだった。はじめに書いたように2人の弁護士にお世話になったが、諸事情で1人目の弁護士が途中で逃げてしまい、結果的に2人お世話になっただけの話だ(なので弁護士費用も2人目に払った分だけで済んだ)。

  • 弁護士費用:価格交渉をして3,500ドル(着手時半額、書類提出前に半額支払った)
  • 申請費用
    • I-129 filing fee:325ドル(筆者申請時点。2016年12月より460ドルに値上がり)
    • Premium Processing fee: 1,225ドル

弁護士が遠方に住んでいたため、これ以外に応募書類を弁護士に送る際の郵便代が別途かかった。なお、これらの費用はI-129のみ必ずスポンサーが支払う必要があるので、会社との交渉が多少は必要になる。

(参考)役に立つ記事

O-1Aビザは取得者が少ないため情報も限られているし、日本語で検索すると多くはアーティスト向けの情報なので、エンジニアとしては参考にしづらいかもしれない。2008年の記事だが、シリコンバレーのエンジニアの方が書かれた記事が最も参考になった。

O-1Aビザの対象者は研究や事業で大きな成果を挙げてきた人とのことだが、筆者は渡米後約8ヶ月でそのエビデンスの9割を作ることができた。筆者は運が良かっただけかもしれないし、良い推薦者に恵まれただけかもしれないが、一応はノーベル賞クラスでなくともO-1Aの取得は可能ということだ。今後申請する人の参考になればと思う。

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