Make SchoolのProduct Academyの第2期が開始してから2ヶ月が経った。第1期の経験を生かしてカリキュラムが変更され、良い雰囲気のまま感謝祭の休暇へと進んでいきそうだ。東京で夏休みに行ったSummer Academyも盛況に終わり、冬休みに世界で初めてWinter Academyという年末5日間のコースを開催予定だ。

今週は日本からの訪問者が多かった。その中で、ある行政区の一団向けに米国・シリコンバレーのロボット産業について講演させてもらう機会があった。今月、From Internet to Roboticsという米国のロボット技術のロードマップが3年ぶりに更新されていたため、その内容も踏まえて話をさせてもらった。準備のために取っていたメモ程度のものだが、以下にロードマップの内容を適宜抜粋してある。日本語訳版は存在しないので、まず目を通してもらい、興味があれば原文を読んでもらうと良いと思う。

米国ロボット産業に影響力のあるロードマップ

このロードマップの位置付けは1.1イントロダクションに記載しているとおり、2009年に産学の有識者が集まって作成され、のちのNational Robotics Initiative(ロボットの研究開発に数百億円規模で支援)設立に貢献した。各領域ごとに、著名な大学の研究者や製造分野ではKukaやFanuc、ABB、宇宙ではNASAといったリーダー企業、KIVA SystemsやRethink Roboticsなどのスタートアップの経営者も名を連ねている。今後15年のロボット研究開発の目安となり、また、ロボットのアプリケーションとなる各産業での課題についても整理されているので有益だ。ロードマップの名前の通り、インターネットに次ぐ革命としてロボットを捉えている。

今月の大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が次期アメリカ大統領となることが決まった。製造業の国内回帰により雇用を戻すということが唱えられているが、様々なメディアで製造業は戻ってこない、戻ってきたとしてもロボットに置き換えられるので職は増えない、と言われている。こうした意見に対し、このロードマップが面白いのはHuman-Robot Interactionに優れたロボットや協調ロボットの活用とワーカーへの適切な教育・トレーニング機会によって、ワーカーの仕事をより専門的で地位の高いものへと変換し、また、米国製造業の競争力を向上させることによって職も増やしていくと結論づけているところだ。

製造以外の分野に関しては、2013年時点のロードマップと比較して、サービスロボットの位置付けが高くなり、医療・ヘルスケアロボットよりも先に紹介されている。また、以前は見られなかった、法律や教育に関する章が僅かだが追加されており、いよいよロボットが研究フェーズから実用化フェーズに移ってきていることを感じるものとなっている。

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1. エグゼクティブサマリー

経済成長と生活の質向上、人々のエンパワーメントのためのロボット

1.1 イントロダクション

  • ロボット産業が立ち上がってから50年が経過。3Kの仕事が対象となってきたが、自動運転、環境モニタリング、宇宙空間と範囲を拡げている。IT技術が生活の中の様々なところで適用されているが、ロボットはタブレットやスマホやPCができない物理的なインタラクションが可能であり、新たな革命を見据えている。
  • 9年前にロボットの統合的なロードマップがアトランタのRobotics Science and Systems (RSS)会議で開始され、Computing Community Consortium (CCC)と120名の有識者によって生み出された。2009年5月までに党集会と政府機関で発表され、National Robotics Initiative (NRI)の設立へと繋がった。NRIは2011年に設立され、2013年には改訂版のロードマップが発行された。今回は2度のワークショップを経て2013年のロードマップをレビューし、アップデートを加えた。

1.2 主なファインディングス

  • 過去5〜6年で60万件以上の新たな仕事が製造業で生み出され、ロボットの適用も広がった。過去3年は4半期ごとに製造現場でのロボット販売が記録を塗り替えてきており、アメリカでは過去最もロボットが使われるようになった。
  • 人間と協業可能なコラボレーションロボット(コボット)の導入が進んでいる。ISO 10218とISO/TS 15066といった新たな標準規格も普及を後押ししている。
  • センサーやコンピューティングパワーが徐々に低価格化してきていることで、制御の高度化、システムの柔軟化が進んでいる。しかしながら設計、実装、稼働で使われている方法論は比較的単純なものであり、豊富なリソースを活用してよりトレーニングが少なくてすむようなインターフェース、インタラクションの開発と研究が望まれる。
  • マニピュレーションでは、ピックアップ以外の柔軟な動作に課題がある(日用品の扱いなど)。素材、センサー統合、動作計画・制御にもまだ課題があり、幼児の器用さに近づけることを目指す。
  • ロジスティクスも主な成長分野。Eコマースは40%以上の年間成長率を誇り、ラストワンマイル用のドローン、多品種のロバストな仕分けが可能なロボット、ウェアハウス内の30mph未満の自走ロボットなどが求められている。研究では複数の自律ロボットの協調制御やロバストなコンピュータビジョンへのニーズがある。
  • その他のプロフェッショナルサービスロボット(オフィスの掃除など)は少しずつ立ち上がっている。店のレイアウトの複雑さはロボットで扱うにはまだ難しい。まずは人の介在が少ないところから適用が進む。課題はインターフェースが悪く、素人に使いにくいところ。
  • 家庭用ロボットで大きな売上を挙げているのは掃除機・フロアクリーナー。コンパニオンロボット(コミュニケーションロボット)は導入が始まったところで、高齢者の介護や子どもの教育などが考えられている。今後、状況認識、ロバストネス、サービスの拡充において、飛躍的な性能向上が必要。
  • 自動運転システムは自動車、飛行機、海中や宇宙空間へと広がっている。人間のドライバーは平均で1億マイル走ると致命的な事故を起こすが、自動運転車をその水準に引き上げるのは決して簡単とは言えない。ドローンについて言えば生活圏での飛行についてはやはりまだ簡単とは言えないが、空輸や環境モニタリングなどで様々な機会がある。宇宙探索では小惑星が地球に接近した際の着陸や遠く離れた惑星でのサンプルの収集は手の届くところまで来ている。これらの領域の主なチャレンジは、人間のオペレータや協力者を含むシステムの構築だ。
  • Industry 4.0やIndustrial Internetといった新たな産業規格にょって、安くて普遍的な通信手段が求められており、それによって分散コンピューティング・知能システムが可能になる。IoTの流行は知能とセンサーを持つロボットの開発とUXの向上につながる。こうした複雑でロバスト、スケーラブル、互換性の高いシステムの設計には新たな手法の開発が期待される。
  • 家庭や仕事の場において新たなシステムが導入されており、これらの新技術の効率的な活用を実現するためのトレーニングについても考える必要がある。大学のみならず、K-12(幼稚園〜高校)でもトレーニングすべきで、こうした技術は皆が利用可能になるべき。
  • 最後に、米国がこれらの革新で先頭に立つために、適切な政策のフレームワークが必要。決して人々の安全を犯すリスクになるものではいけない。

1.3 資料の構成について

  • ロードマップ資料のセクション2.~6.については異なるユースケース毎にロードマップがまとめられている。
    • 2. 製造の変革
    • 3. 次世代消費者向け・プロフェッショナル向けサービス
    • 4. ヘルスケアとウェルビーイング
    • 5. パブリックセーフティの確立
    • 6. 地球と地球外の探索
  • セクション7.では2.~6.にまたがる要素技術の研究のロードマップが描かれている。
  • セクション8.~10.では教育、法律、倫理、経済の観点からまとめられている。また、ロボットに関わる研究の共有インフラの重要性についても述べている。

1.4 省略

(以下、セクション2.~6.をサマリとロードマップについて、一部抜粋。セクションごとに構成が異なるためセクション番号は割愛。セクション7.以降も割愛。詳細は原文を確認ください。)

2. 製造とサプライチェーンの変革

サマリ

ロボット・オートメーション技術のアメリカ経済における戦略的な重要性、ロボット適用により生産性が上げられるアプリケーション、その実現に向けたロードマップについて。

  • 製造業セクターはアメリカのGDPの12%と9%の雇用を占めている。カナダ、メキシコ、日本などの攻勢を経ても製造業が国に残り続ける一方で、他国と比べて研究開発や教育への投資が少ない。
  • ロボット技術の改善とトレーニングされたワーカーは米国の仕事と世界での競争力を増加させる(Amazonが買収したKIVA SystemsやTeslaの工場が先端例)。伝統的なアセンブリーラインではワーカーの高齢化、教育不足、保険などのコスト増などに悩まされているが、ロボット活用による次世代の生産ラインは下記のメリットがある。
    • 知財を保護し、オフショアによる利益流出を防ぐ
    • 企業の競争力を向上させる
    • ロボットのメンテナンス・トレーニングの仕事を生む
    • 工場にロボットと人間の協力チームを作り、強みを発揮し合う
    • 羅患したときに高額医療費が必要な病気を防げる
    • 小売りの要求に対するレスポンススピードを上げられる
  • 製造セクターへの研究と教育投資は米国の製造業を復活させ、それはヘルスケア、交通、防衛など様々な周辺業界の強化にもつながる。

ロードマップに挙げられたキーワード

  • コンセプトデザインと製品の製造のタイムラグを埋めるための、適応力が高く組み換え可能なアセンブリー
  • マイニングや建設現場、工場や物流の効率向上において大きな影響を与える自律走行
  • 環境に優しい、エネルギー消費が少なくリサイクル・リユースの素材からなる製造プロセス
  • 人同様の器用さを持ったロボットハンド
  • 物理的プロセスをモデル化したサプライチェーン
  • 半導体製造から製薬などノンシリコンまで対象とする精密製造
  • 非構造化環境の認識
  • 人間が安全を感じられるロボット

3. 次世代消費者向け・プロフェッショナル向けサービス

サマリ

  • サービスロボットは人の職場や家庭での日常生活を助けるロボットと定義され、産業ロボットと異なり人々が暮らす環境でタスクをこなし、人と協業することもある。

  • サービスロボットはプロフェッショナル向け(業務用)と家庭用とにわけられる。業務用ロボットは労働力を何倍にも増やすことで経済成長を見込むものであり、発電所の検査、橋などインフラの検査、食事の配送や病院での製薬などが用途として挙げられる。年間30%の成長率がある市場。世界で172千台のロボットが使われている。

  • 家庭用のパーソナルロボットは人の支援のために存在し、身体的・心理的な制約を乗り越えるためにある。最も成功しているのは掃除ロボットで、1,000万台のiRobotルンバが売れ、ロボットペットなどが話題になっている。年間28%の成長率。高齢化が普及の大きなファクターになる。

  • 自律飛行ロボットや自動運転車は今後510年で破壊的な技術となる領域。

  • これらが普及していくには1015年かかるというのが共通認識。

  • ROS (Robot Operating System)やその他のオープンソースソフトウェアの広がりが開発を進展させた。
  • 技術のみならず、法律、政策、教育によってインパクトの大きさは変わるだろう。

ロードマップに挙げられたキーワード

  • 5年:
    • ロボットは自らの探索と物理的なインタラクション、人間による教示によって環境のセマンティックマップを作成する。
    • 非構造化された二次元空間を安全かつロバストに動き回り、単純な掴んで移動させるというタスクはこなす。
    • 工場の倉庫でロジスティクス用ロボットが増加し、在庫管理や資材の運搬を行う。
    • 自動運転車は明るく道路標示の見やすい都市において走行が可能になる。鉱山や建設現場といったシーンや荷降ろし、駐車、緊急停止といった特定のタスクで人を上回る。
  • 10年:
    • 不完全な環境モデル(インターネットから得られる情報など)を与えられたうえで、動作計画とタスクの実行が可能。
    • インタラクションなどを通じて得られた情報から環境を深く理解することができる。
    • 自ら障害を取り除くなどして環境を改善していくことが可能。
    • UAVや自走ロボット、脚を持つロボットによる商品の配送が商業化。
    • 自動運転車は舗装されていない道路でも人間のドライバーが走れる場所なら走ることができる。他の車の予期しない行動に対しても対応可能。センサーに不具合があっても安全な状態を保つことができる。
  • 15年:
    • 様々な移動手段を持つサービスロボットが非構造化環境で完全に動くことができる。
    • 環境を感知し、セマンティックマップを作成し、タスク全体の目的にそった形で動作計画を行うことができる。環境の動的な変化にも対応し、自ら適切に働きかけることもできる。
    • ロジスティクスのあらゆるプロセスにおいてドライバーレスフリートシステムが使われる。
    • 自動運転者は人間のドライバーが運転できるあらゆる環境を運転でき、1年未満の運転経験者よりも上手く運転することができる。異常気象やセンサーの異常といった前例のない事態においても対処が可能。

4. ヘルスケアとウェルビーイング

サマリ

  • ヘルスケア用ロボットはケアの必要性の増加と医療従事者不足の問題から増加していく。世界の人口の20%以上でロボットにより改善可能な何らかの健康問題を抱えており、高齢化により更に加速する。
  • ダ・ヴィンチのようなテレロボティクスシステムはより直感的で精度の高い操作を可能にし、成果を残している。手術や放射線治療では工場で自動ロボットが導入されたのと同じように、ITとロボットの良さを取り入れていくと見られている。
  • 医療従事者のトレーニングや治療・リハビリに使用可能なロボットシステムも成果を挙げている。リハビリでは理学療法士の仕事の効率を高められる可能性があるとして期待されている。更に、無人のセラピーが可能になれば長期のセラピーを家庭で続けることができ、未病対策やその他様々な疾患向けに適用することが可能。
  • 家庭での治療が可能になることで生活の質も改善する。NRIではスマートシティやIoTと併せてロボットによる在宅医療・介護の可能性に支援を続けている。
  • 人体の基礎研究への貢献という側面もある。正確に生体データを取得できるようになることで定量的な考察が物理的・社会的行動に対して可能になる。

ロードマップに挙げられたキーワード

  • 老化と生活の質の改善:様々なドメインにおいて、数週間から数ヶ月以上のスパンで複数のインタラクションを自動で実行。ユーザや環境とのインタラクションに応じて少しずつ行動を変化させていき、ユーザ個人のニーズに合うものになっていく。
  • 手術:直感的で透明なHuman-Robot Interaction。コマンド実行のみならず、使用者の意図を汲み取る。
  • リハビリ:ユーザの状態と行動を理解し、複数センサーからの情報を統合して適切な動作をする。感情を理解し、共感する。理学療法士との協働作業を行い、ときにはセラピーのエクササイズをロボットが主導する。
  • 臨床のサポート:精神科や皮膚科の診療におけるテレプレゼンスロボットの利用。ベッドから車椅子への患者の移動。感染症患者のケア。スケジュール調整などの認知タスクの遂行。

5. パブリックセーフティの確立

サマリ

  • ロボットはパブリックセーフティの確立のための防御、抑止、軍隊や市民の被害軽減、土地資産の損害軽減の達成のために使用される。DoDや防衛産業はロボットを無人システムと呼びあらゆる軍事活動を対象としている。
  • 無人システムの重要性を示すため、緊急事態で用いられることもある。東日本大震災の福島原発は災害時のロボットの重要性と課題を示した。
  • 国外の事案に加えて米国内での増加し、また、長期化するテロへの対策のためにコストと効果の両方が求められており、ロボットへの期待が高まっている。

ロードマップに挙げられたキーワード

  • データ表現:大量のセンサーデータを共有化された環境の理解へと変換。
  • インテリジェントな知覚:複雑環境下におけるターゲット認識の自動化又はアシスト。
  • 長時間化:無人システムの耐用可能な時間を分単位から時間単位、日単位、週単位、月単位へと引き上げる。
  • ロバスト化:極端に暑い・寒い環境や風雨、放射線などの環境下への対応。
  • アジャイルアクチュエータ:複雑環境下でも動き回る。人の身体で行えることの代替が可能。
  • 分散知覚:無人システムそれぞれに有機的な知覚のシステムが搭載され、各々がミッション遂行に自動で貢献。
  • 知能:認知タスクや協働知覚。
  • 個別の自動化:認知機能の処理結果に基き、更なる検査のために自ら行動。
  • 協働の自動化:意思決定やリソース分配をシームレスにチームメンバー間で受け渡しする。
  • 制御:効率的、直感的で自然なインタラクションが可能。
  • 情報共有:直感的で透明性の高い周辺環境やチーム、無人システムに関する情報の共有。
  • 人のアセスメント:人の認知状態や身体の状態、コミュニケーションなどを感知し、無人システムが適切な対応を可能とする。
  • チームワーク:人間と機械、人間と人間のチームが情報交換をするのを助け、パフォーマンスを向上させる。

6. 地球と地球外の探索

サマリ

  • 太陽系の交易を維持し、原料を供給するためにロボットが安全、効率、持続可能性へと貢献できる余地は大きい。
  • 生命維持のみならず生活の質を向上させ、また、人間の特徴である好奇心の探求をサポートする。
  • 2050年までの人口と食料生産を見たときに、気候変動のセンシング、環境のモニタリング、海洋モニタリングと海洋探索、無人航空機の交通管理などに取り組む必要がある。

ロードマップに挙げられたキーワード

  • 放射性物質など危険物質の取扱、遠隔操作
  • リモートセンシングでは難しい領域の有人探査以前のロボットによる無人探査
  • メートルスケールの精度の情報を得るための洞窟探査
  • 精密農業:ドローンを使った広域のセンシング、無人車両を使った高価格作物の検査
  • 精密畜産:家畜の世話、生殖サイクルの維持、健康管理
  • 無人機での大気や海洋のモニタリング、汚染状況の可視化
  • クラウドロボティクスを使った24時間リアルタイムでの監視と自律的な判断による汚染などへの対応
  • 宇宙空間で使用される複雑なシステムを人間と同等かそれ以上の性能でコントロール、操縦
  • 無重力化(またはそれに近い状態)での極端な地形へのアクセス、すなわちセンシング、制御
  • 小惑星を掴み、固定する
  • 人間の器用さを超えるマニピュレーション
  • 完全に没入でき、ハプティックやマルチモーダルなセンサーのフィードバックを有するテレプレゼンス
  • 人間とロボット間での意思疎通
  • 極限状況下での接近、ドッキング

参考資料

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