Make Schoolの東京のプログラムも2週目に入った。有料記事だがNewsPicksに取り上げられるなど、日本での注目度の高まりを感じる。筆者は立ち上げを手伝っているロボットスタートアップの活動に加え、IoT関連のアクセラレータの支援も始めた。また、これまで報道されていないベイエリアのテクノロジーやスタートアップの情報も伝えていくため、寄稿の活動も行っている。

今日は、日本ではZMPに加えてTier IVSBドライブなど新たなスタートアップが勃興しつつある自動運転について、米国の事情をお伝えしたい。GoogleやTeslaの動きが目立つ中であまり報道されていないが、そうした大手に負けず劣らずの技術を開発しているスタートアップが米国でも数多く存在しており、今や大手メーカーにとってもロードマップの達成には欠かせない協業相手や将来の買収候補になっている。この1年で自動運転に対するベイエリアのエンジニアの感じ方は大きく変わったと感じており、以前はWebエンジニアやアプリエンジニアはあまり関り合いの無い世界という位置付けだったのだが、最近はこうした今風のエンジニアも「Next big thingは自動運転」といって興味を持ち、Udacityのコースに取り組んだり、実際にスタートアップで働いたりといった知り合いが増えてきている。

目立ち始めたスタートアップ

Google、Tesla、Uber、トヨタ、日産など各社が開発競争でしのぎを削る自動運転。Autopilot機能による事故が相次いでいるTeslaのElon Musk氏も「完全自動運転はあと2年で実現する。自動運転は基本的には”solved problem”だ。」と強気の姿勢を崩していない。

2016年6月にはカリフォルニア州自動車局(The California Department of Motor Vehicles (DMV))が設立2年弱で従業員800人規模を誇るEVスタートアップ、Faraday Futureの公道での自動運転車テストを許可した。Faraday Futureはデザイナーが(Apple本社がある)クパチーノにしょっちゅう通っているという話もあるなどAppleとの関係が指摘されている。カリフォルニア州自動車局が自動運転車の公道テストを許可している企業は以下の通りだ。大手の完成車メーカー、Tier1メーカーに加えて、上述のFaraday Futureの他にもCruise Automation、Zoox、Drive.aiといったスタートアップの名前が目につく。

  • Volkswagen Group of America
  • Mercedes Benz
  • Google
  • Delphi Automotive
  • Tesla Motors
  • Bosch
  • Nissan
  • Cruise Automation
  • BMW
  • Honda
  • Ford
  • Zoox, Inc.
  • Drive.ai, Inc.
  • Faraday Future

潮目が変わったGMによるCruise Automationの買収

多くの自動車メーカーが自動運転車の開発に本腰を入れ始め、開発のロードマップを描いている。彼らの目下の悩みはソフトウェア技術と優秀なエンジニアの確保である。スタンフォード大学の著名な教授陣が「自動運転車の技術はロボット技術。(Sebastian Thrun氏)」「機械学習の技術が自動運転車のパフォーマンスを90%から99%へと向上させるのに役立つ。(Andrew Ng氏)」と語るように、自動運転車の開発ではソフトウェアの重要性が高く、米国の企業とエンジニアに分がある。

潮目が変わり始めたのは2016年3月のGMによるCruise Automation買収だ。これまで、Googleや日独完成車メーカーと比べて出遅れていたGMだが、アフターマーケット向けのADASキットを開発していたCruise Automationの取り込みにより、関連技術と優秀なソフトウェアエンジニアを囲い込むことに成功した。

この買収は金額としても10億米ドル以上と言われており、スタートアップのExitの成功例としてシリコンバレーの起業家・エンジニアを勇気づけた。自動運転はWebサービスやモバイルアプリと比べると難易度が高く、Googleや自動車メーカーには敵わない、もしくはExit先が見つかりにくいと潜在的に考えていた人たちも、今後は自動車メーカーが外部の技術取り込みに積極的になっていくというメッセージに見えたようだ。

では次に、米国に拠点を置く、注目すべき自動運転のスタートアップを見ていこう。

自動運転キットを手掛けるComma.ai、Perrone Robotics、ASI

Cruise Automation以外にも、自動運転キットを手掛けるスタートアップがある。

Comma.ai

17歳にしてiPhone、21歳にしてプレイステーション3のジェイルブレイクに初めて成功したハッカーGeorge Hotz氏によって設立されたサンフランシスコのスタートアップ。1,000米ドル以下の自動運転キットを2016年末までに販売する計画である。TeslaのElon Musk氏からの引き抜きを断り、Andressen Horowitzなどから投資を受けている。

Perrone Robotics

バージニア州に拠点を置き、DARPAや Insurance Institute for Highway Safety (IIHS)から投資を受ける。特許取得済みの自動運転用OSや自動運転キットを開発しており、企業や大学での研究で必要なアプリケーション開発、ハッキング対策などを支援している。

ASI (Autonomous Solutions)

ユタ州に拠点を置き、自動車のほかにも鉱山トラックや農業機械向けに自動運転キットを開発している。ユーザによるマニュアルコントロールとAIによる自動コントロールを可能にしている。

自動運転ソフトウェアを手掛けるDrive.ai、Ottomatika、Itseez

自動車会社のボトルネックであるソフトウェア技術、特に機械学習に強みを持っており、その分野でトップを走る研究室のスピンオフや卒業生によるスタートアップが多い。

Drive.ai

スタンフォード大学のAI研究室の卒業生と著名なロボットエンジニアのCarol Reiley氏によって設立された。周辺環境の認識と動作計画、制御にディープラーニングを活用している。ステルスモードだが既に12百万ドルの出資を受けており、注目されている。

Ottomatika

カーネギーメロン大学から2013年にスピンオフしたスタートアップ。カーネギーメロン大学教授のRaj Rajkumar氏が率い、社員は同大学の教員やGoogle、Appleなどから集っている。2015年8月にTier1メーカーのDelphiに買収された。

Itseez

2005年設立と歴史のあるサンフランシスコベースのスタートアップ。コンピュータビジョンの専門家集団であり、OpenCVやOpenVXなどオープンソースソフトウェア活動への貢献度も高い。2016年5月にIntelに買収され、今後は自動運転向けにディープラーニングベースのコンピュータビジョン技術の開発に注力する。

交通サービス創出を狙うZoox、AuRo、Varden Labs

日本のロボットタクシーの取り組みと同じく、自動運転技術の提供に留まらず、自ら自動運転車を開発し、新たな交通サービスの提供まで目論むスタートアップもいる。

Zoox

メンローパークに拠点を置き、2016年6月には200百万米ドルのシリーズAの資金調達を行ったスタートアップ。完全自動運転車の開発を行っており、都市向けに次世代交通サービス(mobility-as-a-service)としてロボットタクシーを提供すると宣言している。

Auro Robotics

サンタクララに拠点を置く、IIT(インド工科大学)の研究グループからスピンオフしたスタートアップ。Y Combinatorへの参加が決まり、2015年から米国に移った。大学キャンパス向けのドライバーレスシャトルシステムの開発を行っている。

Varden Labs

カナダのウォータールー大学出身のエンジニアによって設立され、Auro Roboticsと同じくY Combinatorへの参加と同時にベイエリアに拠点を移しており、大学キャンパスやテーマパーク内といった閉空間で使用される自動運転車を開発している。

トラックの自動運転に取り組むOtto、Peloton、Starsky

最後に、ドライバーの高齢化に伴う運転手不足や長時間労働による事故などで乗用車以上に自動運転のニーズが高いトラック向けの技術開発に取り組むスタートアップを紹介する(以前のブログにトラックの自動運転については詳しく書いている)。

Otto

Google Xで自動運転者の開発に関わっていたAnthony Levandowski氏らが率いるスタートアップで、設立から半年で既に40名の社員を揃え、Tesla、HERE、Apple、Cruise Automationなどの出身者が集う。2016年5月中旬にステルスモードを一部解除して、高速道路での自動走行のデモビデオを公開したことで話題になった。まずは既存のトラックに後付可能なADASキットの開発に取り組んでいる。

Peloton Technology

Volvoやデンソー、UPSなどが出資するスタートアップ。隊列走行(プラトゥーン)技術の開発を行い、燃費削減と安全性の向上に取り組んでいる。クラウドベースのネットワークオペレーションセンターを持ち状態監視を行う。

Starsky Robotics

Y Combinatorの2016年夏バッジに参加するロボット技術のスタートアップ。ステルスモードであり、”Robots to Automate Vehicles“をキーワードに掲げている。ファウンダーはRocketSpaceなどで勤めていたハスラーと、マルチスズキでの勤務やUpDroidの創業経験を持つエンジニアの二人だ。

上記に挙げた以外にも、自動運転の周辺技術としてナビゲーション技術の開発に取り組むSwift Navigationや、トヨタが出資したことでも知られる衛星通信用アンテナを開発するKymetaなど、様々な企業が存在する。今後も米国の自動運転関連のスタートアップの動向には目が離せない。

参考資料

 

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