シンガポールから帰ってからの2週間はDemo Nightに向けたプロダクト開発、ROS-Industrialのオープンソースソフトウェア開発へのコミット、関わっているスタートアップでの新機能実現、日本企業向けのコンサルティングなどで忙殺された。また、先月ロサンゼルスに居た時にインタビューしてもらったTHE BRIDGEの記事が公開され、何人かの方から連絡をもらった。Make Schoolに関することや、よく記事にしているロボットやIoTに関することで質問があれば、連絡してほしい。急にブログのアクセス数が上がったのだが、アクセスの多い記事を見てみると、ロボットやIoTなどの専門系のものよりも、Make Schoolに関するもののほうが人気があるようだ。しばらくMake Schoolについて書けていなかったので、前回、今回とMake Schoolのビジネスと教育(デモデイ)について纏めておく。

2ndセメスターの山場であったDemo Nightが一昨日4月28日に行われた。Demo Nightの概要については1月に行われたものと基本的に同じなので、以前の記事を読んでもらえたらと思う。唯一の違いは前回が個人で作ったアプリを披露する場だったのに対して、今回はチームでのプロジェクトになったことだ。プロジェクト期間が始まる前に何度かブレーンストーミングのセッションがあり、各々がステージで自分のアイデアをピッチしてチームメンバーを募った。結果として5チームが結成され、2ヶ月に満たない開発期間であったが、多くのチームはプロダクトのリリースまで漕ぎ着けることができた。前回同様、各チームのプロダクトについて紹介しておく。傾向としては社会貢献(Civil Tech)に関するものが多かった。

1. ConectALL Initiative

まず紹介するのはチームConectALL Initiativeだ。デジタルデバイド解消のため、初めてインターネットを利用する人がインターネットの使い方と価値を理解できるプロダクトを作るという、White Houseからの依頼によるプロジェクトだ。St. Anthonyやサンフランシスコ図書館などでのインタビューを行い、図書館で司書の助け無しにマウスの使い方が分かり、Facebookの使い方などが調べられるウェブサイトを作成した。サイト上のコンテンツはCMSのようなシステムで簡単に新規追加できるようになっている。Ruby on Rails, Javascript, HTML, CSSを使っている。

2. xBAND

xBANDはWifiやLTE/3Gなどの携帯通信が使えない地域・環境向けに、ラジオ波を使ったパケット通信でテキストメッセージや検索機能を提供することを可能にするハードウェアプロジェクトだ。Android端末に専用のハードウェアを接続して使うことができる。クライアント端末同士のコミュニケーションのほか、端末を繋いでメッシュネットワークを形成することができ、ネットワーク上の1台の端末がWifiなどの通信環境に接続していれば、他の端末からもインターネットに接続できるようになる、という機能もある。ハードウェアはRasberry Pi, Arduino Mega, 900MHz radio transceiverを用い、ソフトウェアではPython, Android/Java, React Nativeを使った。筆者はパケット通信を実現するためのプロトコルの実装やArduino向けのファームウェアのプログラムを書いた。

3. PyVenom

PyVenomはGoogle App Engineを使ったサーバ開発を容易にするフレームワーク+IDEだ。TinderやInstagramなどの簡単なアプリのサーバはParseが使えたが、それより複雑性の高いプロダクトでは開発難度が急に上がってしまうこと、また、Parseがシャットダウンする予定であることなどから、本格的なGoogle App Engineの技術障壁を下げる野心的なプロジェクトだ。IDEではパラメータの変更などをGUI上で変更することができ、また、(Railsでは規模が大きくなるにつれてデータベースの全体像の把握が難しくなるが)データベースの全体像も確認できる。Python, Electron, Javascript/ES6, HTML, CSS, Google App Engine, BigTable NDBを使っている。

4. Give With Us

Give With Usは少額の寄付(ドネーション)のためのプラットフォームだ。提携している団体への寄付を行うことができ、ユーザは寄付対象を団体名ではなく関心のあるテーマ別に選ぶことができる。また、毎月の定額寄付や過去の寄付の結果をデータビジュアライザーを通じて確認することができる。開発にはRuby on Rails, Javascript, HTML, CSS, Braintreeが使われた。

5. FoundVisa

FoundVisaはO-1ビザファイリング版TurboTaxだ。煩雑で高額費用のかかるビザ申請の手続きを可能な限り自動化することを目指しており、画面に現れる指示に従って項目を埋めていくだけでビザ申請に必要な書類の一部をPDFとして作成することができる。

如何だろうか。こちらのエンジニアは学生、社会人問わず、とりあえず(リリースできるレベルまで)作ってみて、うまく投資を得られればそのまま起業するし、ダメならまたすぐ別のものを作るというスタンスの人が多く、結果として筋の良し悪しはあれども新しいプロダクトのローンチ数が圧倒的に多くなっている。実際、Give With UsとFoundVisaのチームは少額のファンディングに向けて話が進んでおり、このままうまく行けばインターンシップの期間に企業で働くのではなく、自分のスタートアップをやることになるそうだ。自分のプロダクトを作る機会が欲しいという人はSummer Academy、Product Academyの応募を検討してみてほしい。

5月2日追記:週が開けて、xBANDプロジェクトは(元々話を進めていたサンフランシスコ市の情報チームに加えて)市の消防局と協業する話が出てきたり、Samsungのディレクターからチームごと雇用したいという話があったりと、嬉しい連絡が幾つかあった。まだ吹けば飛ぶようなプロダクトだが、こうして色んな人が興味を持って育ててくれようとする文化はシリコンバレーならではだと感じている。

参考資料

広告