今週はロボットに関わる出会いの多い週だった。週明けからロボット関係の著名なコンサルタント・ジャーナリストの方とのランチや、シリコンバレーで長年数々のロボット企業に携わって来られた方とのディスカッションの機会があり、米国におけるロボット情勢の知識をアップデートすることができた。また、今年からメンバーシップに加入したSilicon Valley RoboticsのミートアップではThe State of the Drone Industryと題して、ドローン業界の雄DJIの北米ディレクターやPRENAVというプラント点検用ドローンのソフト・ハードの両方を手掛けるスタートアップのCEOから話を聞く機会にも恵まれた。ドローンについては以前の記事に纏めているが、現状は技術よりも自動運転カーと同じで法規制に苦しんでいる印象だ。

ドローンや自動運転カーのような、高度なセンシング機能とナビゲーション機能を備えたロボット=自律移動体は様々な産業に広がっていくことは間違いない。そこで今日は、移動体以外でロボットの可能性が広がっていると見られるバイオテック分野におけるラボ向けロボットに関する最新の取り組みについて紹介したい。次のビッグデータは遺伝子情報だと言われ注目を集める分野においてもロボット技術が活用されている。自動ロボットの低価格化のアプローチのほか、産業用ロボットが得意としてきた作業の高速化・高精度化に対して、もう一枚「知能化」を加えているところが興味深い。

低価格化/クラウド化による単調作業からの解放

まず紹介するのは従来大型ラボしか手にすることができなかった自動ロボットの機能を中小規模にも手に入れられるようにする取り組みだ。まず、ハードそのものが高額で手に入らない、使いこなすにはエンジニアが必要だが雇う余裕がない、といった課題に対してOpenTrons社はデスクトップベースの自動ロボットを開発している。従来のロボットが10万ドル以上と高額であったのに対して、OpenTrons社が開発するロボットは3千ドルとリーズナブルだ。3DプリンタにおいてMakerBot社がポジションを取ったように、デスクトップのラボ用自動ロボットを目指している。

もし実験サンプルがラボの外に出せるようなものであれば、わざわざ自分で機械を買う必要も無い。そんな取り組みをしているのがTranscriptic社である。Transcriptic社はクラウドベースのサービスを提供しており、ユーザはウェブクライアントを通じて実験の管理を行うことができる。従来の受託企業など同様のサービスを提供している企業はあるが、Transcriptic社の特徴は自社でロボットとソフトウェアの開発を行っているところである。ロボットの高速化を通じて収益性の改善が行えるとのことである。

知能化と自動化の組み合わせによるドラッグディスカバリー・カスタマイゼーションの高速化

次に紹介するのは、機械学習と自動化ロボットの組み合わせによりドラッグディスカバリーやカスタマイゼーションを実現する取り組みだ。Notable Labs社は無数にある薬品の組み合わせ最適化により、脳ガン患者向けのカスタマイズされた処方箋提供の支援を行おうとしている。各実験結果のデータを元により効果の高いと思われる組み合わせと配合量を学習する。但し、それでも無数の試行回数が必要であり、この反復試行を自動化するためのロボットも自社開発している。実は、筆者はラボの訪問をしたことがあるのだが、現状は医療機関や大学との共同開発を行っている段階であった。ロボット内の実験環境を患者の体内の環境に近づけることが技術的な課題として残されているとのことであったが、オフィスもバイオラボや医療機関の集まる施設に構えており、実験室ではソフトウェアエンジニアとサイエンティストが蜜に連携して働いていた。

この分野は大学の研究者の取り組みも見られる。研究者にとっても時間・コストの制約があるなかで条件を勘や経験に頼って絞っていくことには疑問があったようだ。カーネギーメロン大学の研究では本来必要な試行回数のたった29%で、92%正確な結果が得られたとのことである。

“However, we simply cannot perform an experiment for every possible combination of biological conditions, such as genetic mutation and cell type. Researchers have therefore had to choose a few conditions or targets to test exhaustively, or pick experiments themselves. The question is which experiments do you pick?”

by lead author Armaghan Naik, a Lane Fellow in CMU’s Computational Biology Department

合成生物学のイノベーションや遺伝子情報への機械学習適用などで今後更なる進化が期待されるバイオテック分野であるが、それを支えるためのロボット技術についても引き続き注目していきたい。

参考資料

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