Railsの学習と並行して、今週からAngular JSのクラスが始まった。短期間でどの言語・フレームワークを習得すべきかについては学生の間でも議論があるのだが(ウェブ関連だとReact Nativeなどがホットトピックである)、Make Schoolでは様々な企業へのヒアリングの結果、直近求人のニーズがあるものに狙いを定めている。

サマーインターン向けの選考も忙しくなってきた。こちらのエンジニア採用プロセスでは、初期スクリーニングの電話インタビューでも、基本的な概念の説明を求められたり、その場でオンラインドキュメントをシェアしながらコーディングインタビューが始まったりと、集中力を要するものが多い。筆者はロボットやデータサイエンスに関わるスタートアップを中心に見ており、その過程でSilicon Valley Roboticsという団体が主催するジョブフェアに行ってきた。展示企業はFetch Robotics、Savioke、SRI、Neato Robotics、Spheroなどシリコンバレーを代表するロボット会社やBosch(自動運転部門)などの大手企業、そしてKINEMA SYSTEMSのようなステルススタートアップなど計10社程度であった。スタートアップが中心であるため、多くの企業はファウンダーと直接話すことができ良い機会だった。ファウンダーの多くはWillow Garageの出身者であり、互いに旧知の仲であるようだった。今日は、「ロボット業界におけるWillow Garageとは、パーソナルコンピュータにおけるBell LabsやXerox Parcのようなものだ」とまで言われるWillow Garageに迫ってみたい。

Willow Garageとは

Willow Garageは2006年にScott Hassan氏によって設立されたロボットの研究開発・インキュベーションを行う会社だ。ロボット向けオープンソースソフトウェアのROS(Robot Operating System)の開発や、研究開発用の標準ロボットであるPR2の開発で知られており、2014年に会社を閉じるまでロボット産業の発展に貢献した。

ビリオネアが作ったロボット研究者の遊び場

Scott Hassan氏はSergey Brin氏やLarry Page氏とともにスタンフォード大学の研究所に在籍しており、後のGoogleとなる検索エンジンの開発に携わった。Google設立の12日後には$800の出資を行ったという。また、Hassan氏は自身でもeGroupsと呼ばれるサービスを立ち上げ、2000年に$432 millionでYahooへ売却している。こうした成功を経て、自身のBig pictureを実現するためWillow Garageが設立された。2006年当時、日常生活で目にするロボットと言えばiRobot社のRoombaくらいしか無かったのだが、彼には家の中を動きまわり日常生活を助ける汎用自動ロボットが働く未来が見えていたとのことだ。

CEOにはHassan氏がワシントン大学で学生の時分にインターンとして雇われたことのあったSteve Cousins氏を招いた。年間60人の研究者を賄える資金計画のもと、Hassan氏とCousin氏は世界トップレベルの研究者やロボット開発者を採用し、”Impact first and return on capital second”の方針で事業は進められた。設立当初はDARPAプロジェクトに関わるなど幾つかの方向性が示されていたが、次第に目標であったパーソナルロボットの研究開発へと向かっていった。一般販売まで4年の歳月をかけて開発されたPR2は、それまでの大学との共同開発や、積極的な研究者・インターン生の受け入れなどの努力もあり、ロボットコミュニティに歓迎された。そして、業界では”Willow Mafia”と囁かれるほどの影響力を持つようになった。

遊び場から起業家集団へ

ROSPR2の成功ののち、Willow Garageは研究成果の事業化へと舵を切り、「ロボット研究者にとっての遊び場」から「ロボット起業家の集団」へと変貌していく。Willow Garage8社をスピンアウトさせ、2013年にはそのうち2社(Redwood Roboticsの出自であるMeka Roboticsも買収されたため3社とカウントされることもある)がGoogleに買収された。スピンアウトした企業のうち最もHassan氏を興奮させたのがテレプレゼンスという新しい市場を切り拓いたSuitable Technologiesであり、多くのWillow Garage社員がこの会社に移籍した。

当時のWillow Garageは年間$20 millionの損失を出していた。Hassan氏は人々の家の中を自動ロボットが動きまわる世界の到来はまだ遙か先にあることを悟り、2013年後半には出資を引き上げてSuitable Technologiesの経営に専念することを決めた。なお、彼が時期尚早と判断したのは、ソフトウェアの制約ではなく、単純な機能を実現することさえ非常にコストの掛かってしまうハードウェアの側にあったとのことだ。

Willow Garageの貢献と出身企業

そして、シリコンバレー最大のロボット起業家ネットワークが生まれた。以下にWillow Garageの出身企業を列挙する(追記が必要な会社があればコメント頂きたい)。パーソナルロボット開発という夢に向けて生み出されたコンピュータビジョン、マニピュレーション、パスプランニングなどの技術に基づくソフトウェアスタートアップ、家庭用ではないが業務用としてパーソナルアシスタントを行うロボット販売・サービスのスタートアップなどが見られる。なお、先日筆者がGoogle Ubiquityで知り合った、GoogleのProject Tangoを率いる人物もWillow Garage出身であった。ビリオネアにより生み出され、研究者と起業家の両方を共に経験してきた強いネットワークが、シリコンバレーを中心としたロボットブームを確固たるものにしようとしている。

  • hiDOF, Inc.:ソフトウェアコンサルティング
  • Industrial Perception, Inc. (IPI):トラック荷降ろしの自動化など(Googleにより買収)
  • OpenCV:コンピュータビジョン、機械学習のオープンソースソフトウェア
  • Open Perception Foundation:2D/3Dデータ処理のオープンソースソフトウェア
  • Open Source Robotics Foundation (OSRF):ロボットの研究開発、教育向けのオープンソースソフトウェアの開発、流通等を支援
  • Redwood Robotics:Meka Robotics、SRIとのジョイントベンチャーでロボットアームを開発(Googleにより買収)
  • Suitable Technologies:テレプレゼンスロボット
  • Unbounded Robotics:物流向けロボット(Fetch Roboticsの前身)
  • Savioke:ホテル向けロボット
  • Fetch Robotics物流向けロボット
  • Fyusion:2.5D画像キャプチャ/ビューワー
  • Simbe Robotics:小売店向け在庫管理ロボット
  • Avidbots:自動床掃除ロボット
  • Forge:3Dスキャン
  • KINEMA SYSTEMS:ロボットアーム向けソフトウェア
  • Mayfield Robotics:家庭用ロボット

参考資料

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