今週はRuby on Rails Tutorialに沿ったRuby on Railsの基礎習得に加えて、Smart PatientsのFounder/CEOであるRoni Ziegler氏によるゲスト講義や、ExygyのLead DesignerであるWendy Fong氏によるデザイン思考のワークショップがあった。Roni Ziegler氏は元々Google.orgで2006年から6年間、Chief Health Strategistを務めていた。氏曰く、今後のヘルスケア領域で最も大きな変化はこれまで収集できなかったデータの獲得によるソフトウェアイノベーションとのこと。ソフトウェアが世界を食い尽くす現象は今後も続きそうだ。

ヘルスケア同様、規制業界であったタクシー業界ではUberやLyftのサンフランシスコ最大のタクシー会社であったYellow Cab社が倒産した。タクシーのようなオペレーションビジネスにおいては稼働率を如何に高めるかが鍵であり、UberやLyftはTech企業らしくデータサイエンスを活用して収益向上と顧客満足向上に務めている。具体的にどのような点でデータサイエンスが活用されており、どのような工夫がなされているかを纏めておく。

データサイエンスの活用方法

上述の稼働率向上の肝は、ライドシェアリングはマクロ経済の需要(=ユーザ)と供給(=ドライバ)のバランスのコントロールであり、ダイナミックプライシングを中心にデータサイエンスが活用されている。Quoraでの考察によれば、データサイエンティストが行う(と想定される)業務は下記の通りだ。

  • Dynamic pricing models
  • Location-based demand models
  • Driver dashboards
  • Competition modeling
  • User acquisition, retention, and lifetime value
  • User Engagement Modeling
  • Product Metrics
  • A/B Testing
  • Internal Tool Building and Data Reliability
  • Exploratory Analysis, Deep Dives, Strategic Research

他業界のダイナミックプライシングとの違い:Uberの例

ライドシェアリングにおけるダイナミックプライシングについてはUberのプレスで詳細に述べられている。それによると、需給曲線はマクロ経済の理論にかなり忠実に再現されており、このモデルに基づいて価格決定を行っている。ホテルや飛行機、レンタカーなど需要変化が季節・時間帯で大きく異なるビジネスにおいては従来からダイナミックプライシングが行われているが、ライドシェアリングが他と異なるのは、供給に実質的な制限が無いことである。他業界では供給量の限界と価格変更の柔軟性の低さから、ピーク時でも儲けに上限ができてしまうが、ライドシェアリングでは料金が高くなればなるほどドライバーが増えていく。Yellow Cabが収益限界を抱えていたのとは対象に、UberやLyftは稼げるときは稼ぐ、そうでないときは出動を控えるといったことが可能なより儲かりやすいビジネスモデルだと言える。なお、ホテル業界においては同じくシェアリングエコノミーの代表格であるAirBnBによってどのような需給変化が起こるか、経過観察をしてみると面白いだろう。

需給関係を書き換えるデータサイエンス:Lyft Lineの例

筆者がデータサイエンスの醍醐味を最も感じるのはLyft Lineという相乗りサービスだ。Uberも同様のサービスであるUber Poolを提供しているが、元々ジンバブエでの相乗り体験から生まれたLyftは流石にサービスの完成度が高い。Lyft Lineはユーザがピックアップのリクエスト送信後、一定の待ち時間の間に同方向に移動する別のユーザをマッチングする。こうすることで、ユーザにとっては移動時間が単独での移動よりもかかるものの、サービス利用料金が固定料金(例えばSF市内の通常時間帯だと1人で$5)になり、ドライバにとっても一定方向の移動で2人以上乗せられるから儲けも倍になるという仕組みだ。技術的な実装方法についてはLyftのEngineering blogに公開されている

Lyft Lineはユーザとドライバの1対1で想定される需給曲線を書き換え、マーケットの取引総量を増加させる(曲線をx軸正方向に移動させる)点が興味深い。もちろん、効率的なマッチングを実現できなければLyft自身がユーザのサービス利用料の割引分を損することになるのだが、筆者の経験上は多くの場合はうまく相乗りが成立しており、2014年のサービス開始以来ノウハウを積み上げてきていることが伺える。

ここからは想像だが、Lyft LineはUberとの激しい競争で生き残ることにも貢献しているように思える。ドライバーによって「よくマッチングする」「儲けられる」存在になることで、ことSFにおいてはUberよりも選ばれるプラットフォームとなっているのではないだろうか。今後、SFのような都会においては、相乗りのためのデータサイエンス知見をどれだけ早く蓄積できるかが競争要件となっていくと予想しており、経済誌などでの知名度はやや劣るLyftも都市部ではUberを駆逐していく可能性があると思っている。

参考資料

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