年内の学校は残すところあと1週間。iOSプロジェクトのDemo Nightまで1ヶ月となり、UI/UXデザインのクラスやユーザテストの機会が多くなってきた。スタートアップ訪問では仲間内でのクラウドファンディングでよく使われるTiltに行ってきた。また、Pixar Animation StudiosのDirector of PhotographyであるDanielle Feinberg氏の特別講義があり、Pixarのサイエンスオリエンテッドな映像制作の手法について学ぶことができた。

今回はそんな忙しい授業の合間を縫ってサマーインターンシップの応募をしていたドローン系のスタートアップの選考が進み始めたため、ここサンフランシスコでも盛り上がりを見せつつあるドローン市場について整理しておく。

ドローンは民生向け空撮用から産業向け多用途へと拡大

ドローンの代表プレイヤとしてよく名前が挙がるのは主に民生向けに一般空撮用ドローンの機器を提供する中国のDJI、フランスのParrot、アメリカの3DRのグローバル3強、あとは最近数千万ドルを超える規模の資金調達を行った中国のYuneecやEHANGが挙がるだろう。但し、民生向け・機器売りというのは今後成長を期待される市場のごく一部であり、下記の図のように、最近では産業向けやサービス・ソフト系のスタートアップも多く見られるようになった。残念ながら、ドローン後進国となりつつある日本の企業の名前は見られない。

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出典:Drone Market Ecosystem map

電話という必須のアプリケーションを持つスマホと異なり、ドローンが普及していくには地道にニーズを探り続けていく必要があるようだ。少し前まではドローンというとDIY向け以外の人間にとっては何に使ってよいか分からないという声も聞かれたが、Lilyのようにスノーボーディングなどの具体的な「シーン」を定義することにより、裾野は広がりつつある。今最もニーズがあるのは空撮用(下記の図を参照)であり、ドローンにも多く使われてきたアクションカムのメーカーであるGoProも、2016年に自社でドローンを発売する予定だ。監視やモニタリングの用途は空撮に次ぐ市場となっており、ドローンが簡易的に衛星インフラの代替として用いられる事例が増えている。世界のドローン系スタートアップ100社というまとめにもある通り、用途特化型のハード開発企業や、ドローン向けデータ解析サービスなど業態も様々だ。ドローンへの注目が集まるきっかけを作ったとも言える商品配送については、数十分程度しか持たないバッテリーが大きな足かせとなっているため、AmazonやDHLの取り組みが実現するにはもう一歩ブレークスルーが必要なようだ。

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ドローン=動くセンサー:Qualcomm参入の衝撃

ドローン市場が急に立ち上がってきたのは、スマホ市場の成長による高性能センサ等の価格低下といった恩恵を受けているところが大きい。価格低下を引っ張ってきた大量のスマホメーカが生まれたきっかけを作ったのは、QualcommによるSoCやリファレンスデザインの提供であったが、今、Qualcommはドローンでも同じやり方で市場の拡大を目論む。彼らはスマホ用SoCをドローンに活用することで、ドローンをより安く、高性能にできると判断し、IoTシナリオの欠かせないピースと位置づけている。2016年上半期には上述のYuneecからQualcommのドローン用SoCであるSnapdragon Flightを搭載した機種が発売されるとのことであるから、ドローンのハードウェア市場では早くもスマホ同様のコスト競争が本格化するだろう。

ドローンの標準OSを狙うAirware、制御ソフトに留まる日本企業

そんな時代においてはユーザ・顧客に使いたいと思わせるソフト・サービスこそ重要になる。セコムのように技術力があって既存サービスにうまくドローンがはまる場合は自前で全て開発できるかもしれないが、大手企業含めて必ずしも同じ状況ではないだろう。様々な規格の標準品を組み合わせてハードとして完成させ、その上に使えるアプリを開発していくのは単独では至難の業だ。そこに目をつけたのがドローン業界のWindowsを目指して標準OSの供給を行うAirware、Linuxを目指してオープンなOSの構築を考えるDronecodeだ。Airwareは2011年創業だが既に累計約50億円を調達し、社員も90名程度と成長している。2014年にはGEから出資を受け、GEやそのアカウントへの展開を約束されるなど産業用の標準OSとして大きな期待がかかっている。更に2015年には自ら投資ファンドを設立し、自社OSを利用するスタートアップへの投資を行うことで、エコシステムの確立を急ぐ。投資先には、ドローンでの測量や3Dモデリングなどを受託して解析まで行うRedbirdなどが含まれる。

農薬散布用ヘリなどで元々はトップレベルと見られていた日本が既にフォロワーとなってしまったのはなんとも悲しい。ただ、こうした状況に置かれても、「肝はソフトだ」と言いつつ自律制御のためのソフトウェア改良に固執してしまっていないだろうか。屋外での用途開拓においてコアテクノロジーであることは間違いないが、用途開拓とそれに向けたアプリ開発やプラットフォーム確立、解析技術の確立が遅れては、コアテクノロジーを活かす場も消えてしまうのではと心配してしまう。

参考:直近の開発動向

最後に、この一週間で(Qualcommの発表に加えて)いくつかドローン関連の興味深いニュースがあったので紹介しておく。

  • Team develops software to predict and prevent drone collisions:ドローンが物流に使われるようになったときに課題になり得るのがドローン同士の衝突など、無数のドローンの制御に関わる問題であり、Stanford Intelligent Systems LaboratoryではUAVの交通整理システムに関する自動化を実現するとのこと。
  • Aerial thermal imaging camera set for 2016 drone market release:ドローンの最大手DJIが熱赤外線カメラ大手のFLIRと橋梁して熱赤外線イメージング技術搭載のドローンを発売するとのこと。ドローンで検知可能な情報を増やすことにより新たな用途開発に繋がる可能性がある。
  • Not your nephew’s drone: Fleye as flying robot of future:ベルギーのチームがKickstarterで公開した安全なドローン。アーリーアダプターより先の普及においては、キラーアプリの開拓とともに、ドローンをもっとユーザフレンドリーにしていく必要がある。
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