ブログを始めるにあたり、筆者の留学先であるMake School(メイクスクール)について紹介したい。Make School(旧MakeGameWithUs)とは、スタートアップのエンジニア・ファウンダーの養成プログラムを提供する、自らもスタートアップの学校だ。

The college replacement for founders and developers

これがMake Schoolのエントランスに掲げられている言葉だ。現在の大学でのコンピュータサイエンスの教育システムは、スタートアップをはじめとするTech系の会社で必要とされるスキルを身につけるには時代遅れだ。主に研究実績で評価され、スタートアップでの経験に乏しい教員が日進月歩の業界向けの人材を育てることは難しい。一方で、学費は4年間で1,000~2,000万円と高く、卒業後多くの借金を抱えて苦しむ学生も多い。こうした問題意識からMake Schoolは設立された。Tech系の会社との強いコネクションを活かし、現場で本当に求められているハードスキル・ソフトスキルを持ったエンジニア・ファウンダーを短期間で養成するため、”Design, code and shiip”をモットーにカリキュラムが組まれている。

Make Schoolができるまで

Make Schoolは著名なアクセラレータであるY Combinatorの2012年冬プログラムの参加者であり、高校時代からの友人でもあるJeremyとAshuによって設立された。学生でありながらゲームの開発者であった2人は、当初MakeGameWithUsというゲーム作成の指導を行う会社を設立した。開発されたゲームからレベニューシェアを得るというビジネスモデルだったが半年でピボットし、現在のような学生から学費を徴収するモデルになりMake Schoolと改められた。

Make Schoolのチーム

Jeremyがゲーム開発に行き着く経緯は面白く、若かりし頃(といっても今も若いのだが)ガールフレンドとのデートの口実作りに読書を行い、次は小説作りを行い、それが転じてゲーム開発に行き着いたとのこと。彼はカリスマ的なストーリーテラーで、怒涛のようなプレゼンをメモ無しで行うことができる(ちなみに彼の祖父はポーランドで有名な映画監督、そして母親は映画Steve Jobsで一躍有名になったAppleの初代マーケティング部長でユーザインタフェースガイドを書いたことでも知られるJoanna Hoffmanだ)。もう一人のFounderであるAshuはコンピュータサイエンスのみならず、食品やヘルスケアの分野でのイノベーションにも明るいフューチャリストだが、父親はドットコムバブル時期のIPOと倒産をCFOとして経験した財務畑の人であるせいか堅実な性格だ。2人ともパロアルトで生まれ育ったことと、Y Combinatorで構築されたネットワークのせいか、スタートアップ界隈に顔が広く、故にMake Schoolでは毎週著名なFounderによるセッションが行われている。この2人のほか、講師も兼ねる様々なバックグラウンドの社員が現時点で計16名働いている。

Make Schoolが提供するプログラム:Product CollegeとSummer Academy

現在、Make Schoolではサンフランシスコでの2年間のProduct College(Two year program, Product Academy)のほか、夏にはサンフランシスコ、パロアルト、ニューヨークで同時開催される約2ヶ月のSummer Academyを提供している。Summer Academyの料金は現在6,000ドルで、アプリ開発の経験が全く無い状態からでも2ヶ月後には1つのアプリをリリースするところまで行うことができる、所謂ブートキャンプだ。筆者のクラスメートにはSummer Academyの経験者が多く、評判の高さを良く耳にする。クラスメートの1人は個人経営のクリニックのオンライン予約アプリを作成して収益を得るなど内容は本格的なようだ。元AppleのiOS開発者や現役Lyftのエンジニアがメンターになるらしく、講師の質も折り紙つきだ。なお、Summer Academyには過去2年、日本からも一般参加しているほか、資本業務提携先であるGREEからも若手エンジニアの受け入れを行っている。

また、最近ではOnline courseとしてゲーム作成に関するオンラインの授業を提供しており、MITやUC Berkeleyなど著名な大学もカリキュラムとして取り入れ始めている。流行りのEduTech(教育分野のスタートアップ)ということもあり、様々なメディアで取り上げられている。

※2016年5月15日追記:Summer Academyについては別途こちらに纏めました。

Product Collegeのカリキュラム

昨年まではSummer AcademyやProduct College(Two year program, Product Academy)の試運転にあたる10名のGap-year programとして1年間のプログラムが提供されていた(なお、このプログラムには両親が日本人で米国育ちの青年も参加していた)が、今年から満を持して筆者が在籍するProduct Academy(Two year program, Make School ’17)が32名で開始された。Summer Academyに負けず劣らずの人気を誇り、応募者は1,000人を超えたと聞く。

プログラムは2年間を5セメスターに分けており、1stセメスターではコンピュータセオリーの基礎やiOS開発、Pythonを中心としたバックエンド開発、モバイル向けのデザインなどのハードスキルに加え、(気が早い話だが11月から2016年のサマーインターンのインタビュープロセスが開始されるため)レジュメの書き方やインタビュー対策、プレゼンテーションといった内容がカバーされる。2ndセメスターではコンピュータセオリーの発展編やRubyやJavascriptなどのウェブ開発、オープンソース開発に加え、起業家としてのソフトスキルやスタートアップのマネジメント、ライフスキルなどがカバーされる。インターンセメスターは各自スタートアップでのフルタイムのインターンシップを行い、より実践的なスキルを身につけつつ、卒業後の就職活動も兼ねる。続く3rdセメスターは各人の希望を聞きながらフレキシブルに行われるとのことだが、現在計画されているのはハードウェアや機械学習、数学理論などである。最後のセメスターはCapstone Projectと称して各自が自分の作りたいものを作り、投資家に向けてピッチを行う。もちろん、クラス以外に現地のスタートアップ関係者との交流が毎週用意されている。詳細はまた個別に紹介できればと思う。

※2016年5月15日追記:セメスターごとのDemo Dayについてはこちら(第1回第2回)に纏めました。
※2017年1月11日追記:現在のカリキュラムについてはこちらに纏めました。

Product Collegeのコスト

気になるお値段だが、現時点では2年間で10万ドル前後だろうか。支払いのシステムが特徴的で、一言でいうと「出世払い」となっている。学生は前もってコストを払う必要が無く、インターンシップ期間中の(本来学生が受け取るはずの)収入と卒業後2年間の給料からの一定割合(執筆時点では25%とされている)での返済で賄うことができる。なお、3rdセメスター以降は一定時間をパートタイムでのインターンシップを許されているので、在籍中に一定の収入を得ることも可能だ。但し、筆者のようなインターナショナル学生については(現時点ではMake Schoolの投資家からの理解が得られなかったため。今後の我々の活躍と返済実績次第で変更されるだろうが)その限りではなく、(全額ではないが)入学前に一部を支払うか、在学中に毎月一定額を支払う必要がある。

出来立ての学校ということで、筆者は思い切ってリスクを取ったつもりであったが、カリキュラム、講師、クラスメート、環境のいずれも素晴らしく、良い意味で期待を裏切られた。先日のクラスにも日本人のオブザーバが来ていたが、恐らく5年も経たないうちに日本でも同様の教育改革が進むことになるだろう。また、スタートアップの本場で学びたい、アメリカのスタートアップに就職したい、といった人も増えてくるだろう。拙文ながら少しでも興味を持っている読者に貢献できればと思い、今後も筆を取りたいと思う。

※2016年4月30日追記:Two year programの名称がProduct Academyとなったため修正しました。
※2017年1月11日追記:Product Academyの名称がProduct Collegeとなったため修正しました(それ以前のブログでは一部Product Academyという表記になっている可能性がありますがご了承ください)

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